本買うゆえに我あり

買っただけで満足して何が悪い‼︎

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

M・ピカート『沈黙の世界』(みすず書房)という本

沈黙するとは、お口をチャックすること、つまり噤んでいることを言うのだろう。噤んでいるだけか? 噤むということは同時に耳をすますこと、思考することでもある。耳を傾けるその先には何があるのだろう。再び口が開かれるとき、それは思考を停止し、思考…

小森陽一編『夏目漱石、現代を語る』(角川新書)という本

ななななに!漱石が2016年を語るぅぅぅ⁉︎今年は漱石が熊本に来た年から数えて、120年目の節目の年である。 漱石の評論集である。もちろん「私の個人主義」も収められている。「私の個人主義」というからには、「あなたの個人主義」があってもいいのだろう。…

藤田尚志・宮野真生子編『性』 (ナカニシヤ出版)という本

『愛・性・家族の哲学』シリーズの第2巻。副題は「自分の身体ってなんだろう?」。確かに性別は身体を基準に決められてしまう。しかしである。身体を基準に性別を決めているのは、法ひいては政治ではないだろうか。性を、本性あるいは本質ぐらいの意味で使…

先崎彰容『違和感の正体』(新潮新書)という本

思考は違和感から始まる。世界は私と調和していない。いやそもそも私が私自身と調和していないから思考を始めるのかもしれない。 思考を始めるのだろうか、思考が始まるのだろうか。違和を感じるだけでは、思考するのに足りない。違和感に違和に感じること…

熊谷晋一郎✖️大澤真幸/上野千鶴子/鷲田清一/信田さよ子『ひとりで苦しまないための「痛みの哲学」』(青土社)の本

痛みはたびたび哲学で取り上げられる。痛みは極めて個人的なものであるにもかかわらず、人の痛みがわかる(ような気がする)のはなぜかという形で問われる。 しかし人知れず痛みを覚えることもあるだろう。私の下唇と舌にできた口内炎の痛みは決して人に伝わ…

吉永和加『〈他者〉の逆説』(ナカニシヤ出版)という本

帯文から、他者論を推し進めたら宗教に回帰するという逆説を妄想してみた。以下妄想。 他者とは、端的に言って、私にはよくわからないものということである。理解できるものは、自己に属すのであって他者ではない。しかしなぜわからないものがあるのか。 そ…

大塚英志『二階の住人とその時代』(星海社新書)という本

友人からの誕生日プレゼントで500頁もある本書をもらった。一体何を考えているのか。本の海を漂う私に本をプレゼントするとは、勇気ある友人だと思う。副題は「転形期サブカルチャー私史」、オタクである著者についての自伝だろうか。 二階とは、一戸建てと…

『うつくしいひと』という映画

映画『うつくしいひと』。小林秀雄をもじって言えば、「ひとのうつくしさがあるのではなく、うつくしいひとがいるのである。」 熊本を舞台に、熊本に縁のあるキャストで製作された「うつくしいひと」。これは現総理である安倍晋三が使っていた「美しい国」…

中島義道『不幸論』(PHP文庫)という本

幸福を求めて幸福になれるかどうかはわからない。しかし不幸を求めれば確実に手にできる。 不幸を求めて不幸になったら、ただの不幸だ。不幸を求めて幸福になったら、それは希望通りにならなかったということだ。やはり不幸だ。不幸を求めれば確実に不幸に…

藤田尚志・宮野真生子編『家族』 (ナカニシヤ出版)という本

『愛・性・家族の哲学』シリーズの第2巻をすっとばして、第3巻。 家族は一人ではできない。つまり二人以上で可能となるのが家族である。二人以上、すなわち他者の存在から始まるのが家族である。他者と共に在ることを考える上で、家族の考察は不可欠だろ…

『群像』2016年6月号(講談社)という雑誌

2年連続して、たまたま買った雑誌に掲載された作品が芥川賞を受賞した。その作品を目的に買ったわけではない。羽田圭介の「スクラップ・アンド・ビルド」が掲載された『文学界』(2015年3月号)を購入したのは、平野啓一郎と金杭(『帝国日本の閾』で丸山眞男…

佐々木隆治『カール・マルクス』(ちくま新書)という本

本書は人物名を書名としており、そこからして著者だけでなく編集者らの意気込みを感じとってしまう。ことちくま新書は、そうした新書が成功しているように思われる。たとえば重田園江の『ミシェル・フーコー』は、中山元『フーコー入門』とは違う、ゾクゾク…

佐藤雅美『知の巨人 荻生徂徠伝』(角川文庫)という本

本書を書店で見つけられなかった。角川文庫の棚にはなかった。どこにあったかというと、時代小説の棚だった。だから、時代小説を買ったのは初めてかもしれない。 さて本書はハードカバーのときから注目していた。参考文献には、丸山眞男の『日本政治思想史…

橘川俊忠『丸山真男「日本政治思想史研究」を読む(仮)』(日本評論社)という本

「すぐれた研究書はそれ自体ひとつの「世界」をかたちづくっています。あるいはそれ自身として一箇の「小宇宙」といってよいものです。古典ともなった研究書は、そこに盛られた知見そのものがたとえ古びていったとしても、なお生きのこります。テクストとし…

高桑和巳『アガンベンの名を借りて』(青弓社)という本

哲学者アガンベンの著書を訳してきた翻訳者によるアガンベン入門。アガンベンと言えば…………アッカンベー………………よく知らないから買ったのである。以上

藤田尚志・宮野真生子編『愛』 (ナカニシヤ出版)という本

『愛・性・家族の哲学』シリーズの第1巻。 philosophy(哲学)は「知を愛する」を語源とする。では逆に、「愛を知る」とは哲学の反対、反哲学なのだろうか。 愛を知ることもまたphilosophyの営みであるように思う。プラトンの『饗宴』、アレントの『アウグス…