藤田尚志・宮野真生子編『愛』 (ナカニシヤ出版)という本
『愛・性・家族の哲学』シリーズの第1巻。
philosophy(哲学)は「知を愛する」を語源とする。では逆に、「愛を知る」とは哲学の反対、反哲学なのだろうか。 愛を知ることもまたphilosophyの営みであるように思う。プラトンの『饗宴』、アレントの『アウグスティヌスの愛の概念』、レヴィナスの『存在の彼方へ』などなどでは愛について語られてきた。本書もまた愛を知る哲学の系譜に属するのだろうか。
帯には「「愛」の一語が秘めた深遠な思想史の扉を開く」とある。「愛」という一語は、「恋」という一語とも「恋愛」という二語とも違うのだろう。柳父章の「かつてこの国に「恋愛」はなかった」という言葉が思い出される。LOVEの翻訳語として当てがわれた「恋愛」は、「恋」と区別され、「高尚なる感情」を指すそうで、俗的に言えば、恋の下心、愛の真心といったところだろう。
子どもを「愛の結晶」と言ったり、あるいは子作りをmake loveと言ったり、「愛」という一語にはなにか子どもがまとわりついている。そのためだろうか、同性愛が否定的に捉えられているのは。子どもがいても愛のない関係、子どもがいなくても愛のある関係、「愛」とはなんだろうか。
以上