本買うゆえに我あり

買っただけで満足して何が悪い‼︎

中島義道『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)という本

私の部屋に象はいない。これは全く以って正しい。しかし何か違和感が残る。それは私の部屋に象がいることの真偽が問われていること、すなわち真にせよ偽にせよ私の部屋に象がいることが前提にされていること、これだ!私の部屋に象が占める場所なんてそもそ…

巻田悦郎『ガダマー入門』(アルテ)という本

悪いことをしてしまった、悪を為せるのはただ他者に対してのみである。 ある書店の哲学書コーナーで本を眺めていたら、爽やかな青年に声をかけられた、「哲学がお好きなんですか」と。書店で声をかけることもかけられることもまずほとんどない。しかしこと…

熊野純彦『マルクス 資本論の思考』(せりか書房)という本

本書は前回言及した熊野純彦の主著と言っていいだろう。惚れ惚れする美しい本である。書店で見かけたら、ぜひ色あい、手触り、重さを感じて欲しいとともに、本書を書きながら、ハイデガーの『存在と時間』、カントの三批判書を並行して訳す人間が同じ時代を…

河合香吏編『他者 人類社会の進化』(京都大学学術出版会)という本

裏表紙の帯には本書の意気込みが書かれている。「今日「他者」は諸学問の流行テーマである。しかし本書はそれらの議論とは一線を画す。すなわち、一切の思弁を排し、ヒトとサル(そして他の動物)の参与的な観察事例にこだわった厳密な経験科学として、「他者…

荒木優太『これからのエリック・ホッファーのために』(東京書籍)という本

「勉強なんか勝手にやれ。やって、やって、やりまくれ!」という帯文はまさにその通り!勝手にやるさ!私が日本政治思想史家の丸山眞男について調べ始めたのもまさにそう。大学教員に丸山について質問したところ、丸山なんて読む必要がないと言われたのがキ…

『災害支援に女性の視点を!』(岩波ブックレット)という本

「東日本大震災の教訓を生かすために」 震災によるストレスからパートナーへの暴力に発展した。避難所では性別役割が固定化して、女性たちが疲弊した。みんなが生きるために読まれるべき本。以上

坂爪真吾『セックスと障害者』(イースト新書)という本

この著者にして、この著書あり!帯の写真には『切断ヴィーナス』!待ちに待った本だ!しかし障害者と性について私は複雑な気持ちになる。 障害者と一口に言っても、身体、知的、精神など、さらには男性と女性、それらにカテゴライズされない性的マイノリテ…

鷲田清一『ひとはなぜ服を着るのか』(ちくま文庫)という本

タイトルからしてソソられる。肌を守るためとかそういうことではなさそうだ。帯文の「ファッションは魂の皮膚である!」にはシビれた。おそらく服の機能どはなしに服の意味の探究だろうか。 ひとは毎日、なんらかの服を着ている。数ある生地、色、メーカー…

宮下志朗 小野正嗣『世界文学への招待』(放送大学教育振興会)という本

今年度から開講された放送大学のテキスト。芥川賞作家にして、『林修の世界の名著』に三度の出演を果たした小野正嗣が初回を務める。 当たり前といえば当たり前だが、「世界」の中に「日本」は含まれている。だから「世界文学」の中にも「日本文学」が含ま…

長島要一『森鷗外』(岩波新書)という本

副題は「文化の翻訳者」。翻訳者としての森鷗外に焦点を当てたものだろうか。 翻訳者が有名な作家であることはそんなに珍しくないかもしれない。たとえば村上春樹も翻訳者にして世界に知られた作家だ。してみれば、翻訳という営みには何かグレートなことが…

加島祥造『「おっぱい」は好きなだけ吸うがいい』(集英社新書)という本

真意を測りかねるタイトルだ。女性が手に取ることも考慮しているだろうから、そのままの意味で受け取ってはいけない、たぶん。「おっぱい」と鉤括弧をつけるあたりからしても、比喩なのだろうと思う。やりたいことをやれ!ということか?にしても他に言い方…

ドストエフスキー『地下室の手記』(新潮文庫)という本

地下室で書かれた手記なのだろう。地下室というとジメジメした印象を受けるのは私だけかしらん。そんな場所で書く野郎は、根暗な卑屈野郎に違いない。 手記は日記とは違う。日々の出来事を書き連ねたものではなく、自分の体験や経験を書き連ねたもの。小保…

安西信一『ももクロの美学』(廣済堂新書)という本

副題は「〈わけのわからなさ〉の秘密」。モノノフの著者がももクロの魅力を語った本なのだろう。 帯文には「偶然を必然に変えるエビぞりジャンプ!」とある。たしかにあのレッドのエビぞりジャンプには私も見惚れたことがある。ももクロはみんな動く動く。…

『青春と読書』2016年4月号(集英社)という雑誌

『漱石のことば』の刊行を機にした、著者の姜尚中と小森陽一の対談を目当てに買った。 漱石研究者の小森陽一は『壊れゆく世界と時代の課題』で、「姜尚中が最近、漱石論者になっている」と気になっている様子だった。はてさて対談や如何に?以上

土屋惠一郎『世阿弥 風姿花伝』(NHK出版)という本

能に関心はない。ただ著者の名前にムムムと来て買っただけだ。著者は功利主義者ベンサムの研究者だったのだが、能についての著書もあり、それが芸術選奨新人賞を受賞している。世の中にはすごい人がいたものである。以上

開一夫『赤ちゃんの不思議』(岩波新書)という本

吾輩は独身である。子どもはまだない。 帯や各章の扉絵に描かれた赤ちゃんが可愛かった。どれほどカワイイかはぜひ手に取って確認して欲しい!以上

永江朗『新宿で85年、本を売ること』(メディアファクトリー新書)という本

紀伊国屋書店新宿本店には一度だけ行ったことがある。NHKのドキュメント72時間でも取り上げられた。聖地の一つと行ってもいいのかもしれない。 著者の分野は「哲学からアダルトビデオまで」多岐に渡るが、『本を読むということ』など本に関する著書は面白…

杉田俊介・瀬山紀子・渡邉琢『障害者介助の現場から考える生活と労働』(明石書店)という本

豪華な執筆人だ。 立岩真也が「身体に良き本」として挙げた『介助者たちは、どう生きていくのか』の著者である渡邊琢、同じく「身体に良き本」として挙げられた『無能力批評』の著者の杉田俊介、『福祉と贈与』で福祉社会学会賞奨励賞を受賞した深田耕一郎…

トーベ・ヤンソン『ムーミン・コミックス・セレクション』(ちくま文庫)というマンガ

ご存じ、ムーミン!訳者は冨原眞弓。訳者はシモーヌ・ヴェーユという哲学者の研究者として知っていたが、『ムーミンを読む』などの著書もある。 知り合いにフーミンと呼ばれる人がいて、てっきりムーミンから名づけられたのだと思っていたが、実は細川ふみ…

プラトン『ソクラテスの弁明』(光文社古典新訳文庫)という本

本書を「百獣の王」こと武井壮が推していた。 翻訳はいくつかあるが、光文社古典新訳文庫を推す。訳者は納富信留。プラトンに関する著書があるだけでなく、国際プラトン学会前会長…すごくねぇ⁉︎以上

『週刊読書人』という新聞

最近、『週刊読書人』を買っている。企画が面白い!綾瀬はるか主演でドラマ化した『わたしを離さないで』をめぐる小松美彦と田中智彦の対談、『脱原発の哲学』を刊行した佐藤嘉幸と田口卓臣の対談、イスラームをめぐる中田考と松山洋平の対談、『模倣と権力…

永山薫『増補 エロマンガ・スタディーズ』(ちくま文庫)という本

副題は「「快楽装置」としての漫画入門」。すなわちレッキとした「漫画入門」なのだ! 我が30年の人生の経験則が言うには、キワモノを扱った本はハズレが少ないそうだ。そうした本には、キワモノという周縁からズバリ中心へと至る醍醐味が用意されているは…

ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)というマンガ

知らなかったわけではない。けれども買わなかった。しかし後に買った。 日本政治思想史研究者の苅部直の『ヒューマニティーズ 政治学』の第2章「政治の空間ー政治学のこれまで」の第2節「政治の原像と都市」で紹介されていた。 曰く、「「ローマ人として…

平野啓一郎『私とは何かー「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)という本

今回は読了した本について語ろう。本書の「分人」という言葉が目に入り、これだ!とピンと来て買った。似たことを考えていたので、サクサク読み終えた。 本書の射程はかなり広い。それを物語るように、『ほんとうの構造主義』(NHKブックス)、『集合知とは何…

柄谷行人『憲法の無意識』(岩波新書)という本

本書はいまだ買ってない。なぜかといえば、まだ刊行されていないからである。買ってもまだ読まない本について書いているのだから、まだ買ってない本について書いても同じことだ。 著者の批評は夏目漱石などの文学作品を論じることから始められ、マルクスや…

大塚英志『社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門』(角川EPUB選書)という本

私は著者の民俗学者としての顔しか知らなかったが、友人から『物語の体操』をもらって、まんが原作者として知られていることを知った。その著者による日本民俗学の祖、柳田國男の入門書だったら魅了されないわけがない! またタイトルにある「社会をつくれ…

柴田元幸翻訳・木村草太法律用語監修『現代語訳で読む日本の憲法』(アルク)という本

日本国憲法の英文版を現代語訳した本だが、超がつくほど豪華!まず翻訳者は、現代アメリカ文学の旗手にして、村上春樹の友人である柴田元幸!法律用語監修は、やはり憲法学の旗手にして、趣味の将棋が嵩じた「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」も講じている木…

上岡伸雄『テロと文学』(集英社新書)という本

タイトルを見てピンと来た。本になったのかと。注目していた論文から書籍が産まれるのはただただ嬉しい。即買った。 注目していた論文とは、2011年10月号の『世界』に掲載された「9・11後、アメリカ文学は何を語りうるかー『自分たち』と『他者』の間」。9…

片山杜秀『国の死に方』(新潮新書)という本

著者には本書の他に『近代日本の右翼思想』、『未完のファシズム』という著作もあり、これらの書からは思想史研究者としての顔を知ることができる。しかし私が最初に出会った著者の顔はそれではない。 毎週日曜日が待ち遠しい。休日だからではない。新聞に…

『ディコ仏和辞典』(白水社)という辞書

世にフランス語辞典はあまたあれど、なぜ余はかくもこの辞典を手にとりしか? まず編集責任に吉川一義が名を連ねている。吉川はフランス文学会の会長を務めた人で、満を持してのプルーストの『失われた時を求めて』の新訳は現在進行形で刊行中だ。 購入を決…